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Chap.6-7 The lord of the Bhujerba -ビュエルバの主- [Chapter6 再会]

「閣下は日没まで公務がございますので、それまでこちらでお待ちいただき・・・」「え     っ!?」
「屋敷に来いって言ったのはそっちだぞ。さっさとパン・・・」
 侯爵亭前の警備兵にくってかかるヴァンを引っ込めようと襟首を掴んだ手を、ヴァンが掴み返した。
「放せよバル・・・・うわっ!」
 振り返ったヴァンの目の前には、バルフレアではなく浮雲亭の用心棒バンガが、物凄い形相で仁王立ちしていた。「ほら何やってるんだ坊主!店の掃除が残ってるだろうが!サボってんじゃねえ!」「えっ、掃除?何だよそれ、ちょっ・・・」
 ポカンとしたヴァンに構わず、こわもてバンガはヴァンの襟首を掴んだままズルズルと引き摺っていった。

「ほらよっ!」
 浮雲通りに入ったところで、バンガはバルフレア達の目の前にヴァンを放り出した。
「余計なこと言わないようにガキにはおしゃぶりでも噛ませとけ!」
「・・・そうしたいね。」
 埃まみれのヴァンを乱暴に起こしながらバルフレアがぼやいた。
「もう騒ぎを起こすのはお終いだ。とっくにゲームは次のレベルに進んでるんだぜ?」
 ぐうの音も出ずに大人達の間に決まり悪く立つ少年の姿を、こわもてバンガはギョロリとした目でまじまじと見ながら唸った。
「ハバーロの奴もわけがわからんぜ。お前を始末しねえで好きに泳がせとくなんてよ。」
「う・・・・」
 今さら狼狽えたような顔をする馬鹿正直なヴァンの顔に、バンガは怒る気すら削がれたように肩をすくめた。
「まあ、なんだ・・・・奥で見たこと、黙っとけよ。」
 こわもてバンガはそう言うと、最後にバッシュをギロリと睨み付けてから、浮雲亭へと戻っていった。


「ったく、あいつら何をグズグズしてるんだよ。」
 浮雲通りへ引き替しながら、ヴァンは性懲りもなくプリプリしながら言った。
「侯爵の仕事の都合なんかパンネロには関係ないだろ。すぐに帰してくれりゃいいのに。」
「あの子は侯爵の客ではなく今は帝国の客だ。そう簡単にはいくまい。」
 そう言うバッシュの言葉を尤もだと思いながらも、ヴァンは素直に頷けなかった。
「あんたは侯爵に用があるからいいけどさ、俺とパンネロは解放軍には関係ないんだからな。」
「関係ないの?」
「ないよ!」
 ふいにフランに聞き返されて、ヴァンは意地になって邪険に答えた。
「俺は空賊になって自由に生きるんだ。帝国相手に戦争したい奴は勝手にすればいい。」
「あなたに自由を手にする覚悟があるかしら?」
「え?」
 フランの言葉にドキリとしたヴァンだったが、フランは答えを待つでもなくそっぽを向いてしまった。
「なんだよ、覚悟って・・・・」
 戸惑った顔をするヴァンの気を逸らすようにバルフレアが脇の三叉路に目を遣った。
「ほら、いつまでもゴチャゴチャ騒ぐな。”反帝国組織の皆さん”が殺気だってるだろ。」
 その視線を追うと、ビュエルバガイドが今にも刺さんばかりの目でこちらを見ている。
「っ?!いや・・・ハハハ・・・」
 目が合ったガイドは、慌てて営業用のスマイルに戻ると、手に持ったガイドブックを言い訳するようにパタパタ振った。
「反帝国組織?ははは、ビュエルバは中立国だからそんなものが存在するはずがないですよ!」
 そう言ってヒソヒソ声で付け足した。「・・・・誰かに聞かれたら、こう答えてくださいね。」

「なんだかなぁ。」
 ヴァンはあちこちに立つビュエルバガイドを遠巻きに眺めながら、採掘作業員居住区へ続く石畳をつまらなそうに蹴っ飛ばした。
「あれじゃ、帝国を監視してるんだか俺達を監視してるんだか分からないじゃないか。」
「両方に決まってるだろ。・・・・お前、自分が一国の元首を”脅迫”したって分かってるのか?」
「分かってるよ。」
「だったら空中テラスから下を見る時はもう少し背中に気をつけろ。」「・・・・へ?」
「さて、と     
 ヴァンの言葉も聞き流して、バルフレアは大きな伸びをしながらバッシュに言った。
「日が落ちるまでどうする?」
 立ち止まった三叉路は浮雲通りの突き当たりで、バスケスの宿屋の小さな看板がすぐ先に見える。
「酒でも飲んで時間を潰すところだが・・・・あの店じゃな。」
 さすがに浮雲亭では酒の味がするまいと苦笑を返すバッシュを見て、
「だったらさ!」
 曇り空からパッと太陽が顔を出したみたいにヴァンが元気な声を上げて割り込んだ。
「モブハントに行かないか?」
 そう言ってポケットからガサガサとしわくちゃの紙を何枚か取り出すと、そのうちの1枚を拡げて見せた。
「ラバナスタのクラン本部で受けた依頼の中に、ビュエルバのがあるんだ。」
 ヴァン見せた貼り紙には、青と碧の体をしたブルーバシリスクの絵が描いてある。大きな碇の様な鎌首を持ち上げ、長い尻尾の先は鮮やかな黄色だ。
「ランクEか・・・」
 バルフレアが値踏みするように目を細めた。貼り紙には、エイコムという依頼人の短い依頼文も書いてある。

”ルース魔石鉱にとんでもないモンスターが出た。これじゃおっかなくて採掘どころじゃねえよ。頼むよ。誰か何とかしてくれ。”

「謝礼に何を出すかくらい書いてもらいたいところだな。」
「そんなケチなこと言うなよ。もうルース魔石鉱なんて俺達の庭みたいなもんだろ?行こうぜ!」
 ヴァンは怖い者知らずの大胆さで、せっかちに大人達を急かす。
「嫌なら俺1人で行くよ。」
「付き合おう。」
「そうこなくちゃ。」
 助っ人はバッシュ1人で充分とばかり、ヴァンはさっさと浮雲通りから居住区の北へ向かう通りへと歩き出した。
「バルフレアとフランはノノと一緒に昼寝でもしてなよ!その代わりお宝は全部俺のものだからな。」
 大きな口をたたいて無邪気に手を振るヴァンの後ろで、バッシュは見透かしたようにこちらを見て立ち止まっている。それを見れば、バルフレアは苦笑いするしかなかった。
「・・・・ったく、二人で何とかなる相手かよ。」
「でも、四人なら眠気覚ましにはピッタリじゃない?」
 そう言って、二人の空賊は宿のベッドに別れを告げて、ヴァン達の後を追った。





(あの時、確かに・・・・)
 坑道入り口の大きな石の柱が並ぶ陰、遠く僅かに動いた、
 あの人影は     .

「どうしました?」
 ラーサーの声にパンネロはふと我に返った。
「やはり怖いですか?こんな場所は。」
「あ、はい・・・・」
 気遣わしげな眼差しを向けるラーサーに、パンネロはぎこちない微笑みを返して俯いた。
 こんな場所、と言われても、そこはパンネロが思うような部屋とは大きく違っていた。確かに侯爵邸内のような広さは無いが、設えられた調度はデザインこそ簡素とはいえパンネロの目にもその質の良さが分かる贅沢な作りだ。壁の一面には窓のように大きなスクリーンがあって、薔薇と菫の色に染まった夕暮れの空を映し込んでいる。耳を澄ませば微かに低い低い駆動音が聞こえる気はするが、僅かな揺れさえ感じられないその場所は、まだ侯爵邸の一室にいると言われても疑わないほどだ。
 ただはっきりと違うのは、周りで目にする人々から、ゆったりとした服装のビュエルバの人々が消えて、黒光りのする帝国兵の甲冑ばかりになったことだった。
「もう少し我慢してください。必ず無事にラバナスタにお送りします。」
 ラーサーは年端に似合わぬしっかりした声でパンネロに語りかける。だがその気遣いの言葉を、もう1人の男の冷たくカサカサした声が遮った。
「殿下はどうしても属領ダルマスカにおいでになられますか?」
「それは卿も了承済みのはずです。」
「ですが、素性の怪しい娘ごときに殿下自ら同道されることはありますまい。」
 ジャッジマスター・ギースのその言葉に、ラーサーはやや機嫌を損ねたように眉をひそめた。
「素性は私が保証します。彼女は私の大事な客人です。」
「失礼をいたしました。」
 ギースは慇懃にかしこまったが、相変わらず乾いたその声は枯れ葉のように空疎に響いた。この人は金の兜の下でどんな顔をして幼い皇子を見ているのだろう、とパンネロは思った。
「帝都にいては見えないものもあります。」
 ラーサーは明るい目をパンネロに向けながら言った。「それに     
「ドクターは急遽先行して直接ラバナスタに向かったと聞きました。向こうで興味深い話が聞けるかもしれません。」
「それはお耳が早い・・・・」
 無表情な兜の下で、ギースは明らかに感心ではなく苦笑していた。
「では出発は明朝、予定通りに。今夜は早めにお引き取りください。」
 ギースは紅の大マントを翻すと、優雅な物腰で一礼した。
「・・・・艦隊の合流が深夜にずれ込みましたので、多少お休みの邪魔になるかもしれまんが、ご容赦を。」





 いつしか空は紺青に染まり、プルヴァマ・ドルストニスは満天の星に包まれていた。他のプルヴァマの影が星空に斑の闇を散らしているが、そこには夜間飛行の飛空艇達の航行灯が幾つもの流れ星のように煌めき、地ではビュエルバの街の灯がもう一つの満天の星空を作っている。その星々の狭間では巨大な魔石の翼が青白いヴェールのように透き通った光を放ち、碧く照らされる森と魔石の光に抱かれて、オンドール侯爵邸は絵本に出てくる夢の城のように幻想的な姿を夜の空に浮かび上がらせていた。

 星を映した魔石の翼が照らすその塔と塔の谷間、幾つもの窓が見える。その一つから、僅かに黄色い灯りが漏れていた。そっと引き上げられたカーテンの陰には、ヴィエラ族の2つの長い耳が見える。
 フランは、闇の向こうを見通すような鋭い目を伏せると、素早くカーテンを降ろした。
 また、息苦しくなるような静けさがその部屋を満たした。

 日没を待って再び訪ねたオンドール侯爵邸で、陰気な顔のレベ族に「こちらでお待ちいただきます。」と有無を言わせず案内された先は、ひっそりと殺風景な控室のような場所だった。大きな窓には分厚いカーテンが降りていて、歩く音さえ毛羽の深いカーペットに吸い込まれて消えてしまう。あまりの静けさに、ヴァンは果たして他の部屋にちゃんと人がいるのか心配になったほどだ。
 この部屋でまた待たされて、もう何分経つだろうか。
「お、コソドロらしくなったじゃないか。」
 暇つぶしに銃を磨いていたバルフレアが、からかうような声をあげた。ヴァンはムッとして、試しに被ってみたバラクラバを脱いだ。
「やだよ、こんなの。」 / |´・ω・`| \ みんな~ にしか見えないし。
 ヴァンはもしゃもしゃになった髪の毛を濡れた犬みたいに振った。
 ルース魔石鉱の奥でニーズヘッグを無事に倒して、坑道入口にいた依頼人エイコムから受け取った報酬は、600ギルの他には、女が付けるような薔薇のコサージュと、ニーズヘッグの抜け殻と、このバラクラバ。顔の真ん中だけ出してすっぽりと頭から首まで被う分厚い毛織りの帽子は、騒音の中で働く鉱山労働者にはいいかもしれないが、ダルマスカの人間にとっては暑苦しいだけだ。なんだか体よくガラクタを掴まされたような気がしてヴァンは機嫌が悪かった。機嫌が悪いと言えば他にも理由がある。
「だいたいさ、あんたも魔法が使えるなら使えるって言えよ。」
 ヴァンはバラクラバを尻のポケットにねじ込みながら口を尖らせた。
「誰が使えないなんて言った?」
 匂いもしない薔薇のコサージュをキザに鼻に当てていたバルフレアは、退屈そうにチラリと片眼でヴァンの方を見た。
「だってさ・・・・」
 その態度があまりに堂々としているので、ヴァンはまるで自分がヘマでもしたみたいに居心地悪くそっぽを向いた。


 ルース魔石鉱の第一運送路の奥で見つけた大蛇ニーズヘッグは、同じEランクでもテクスタとは比べものにならない厄介な相手だった。
 攻撃と言えば暴れ回って噛みついたり長い尻尾でなぎ払うぐらいなのだが、とにかくパワーがあって、硬い。蒼く輝く鱗は剣も銃弾も簡単には通さず、ヒビ一つ入れるまでに、こっちはケアルを何度ももらうハメになった。フランがプロテスをかけてくれたが追いつかず、しかも骸骨兵士・スカルアーマーが続々と湧いてくるので、バルフレアとフランはその排除に忙殺された。
 ヴァンとバッシュは四つの首に一つの頭の大蛇の牙をかいくぐりながら剣を振るったが、相手はダメージが増えれば増えるほど、派手に暴れてのたうち回り、うまく間合いを取ることさえ難しい。今度はこちらのダメージばかりが増えて、ヴァンはバッシュの援護に懸かりきりになった。これでは相手を削るどころか、そのうちヴァンがガス欠になってしまう。
 その時、背後からバルフレアの声が響いたのだった。

「精霊の光の羽折れ 呪いなす闇となれ     ブライン!」

(え?)
 ポカンとして思わず立ち尽くしたヴァンの目の前で、突如現れた闇色の靄が大蛇の眼を覆い、その視界を奪った。ニーズヘッグは益々苛立って坑道がきしむような叫び声をあげてのたうち回ったが、暗闇を払うことは出来ず、盲滅法に振り回す尾は背中を向けているヴァンにすら当たることもなく、虚しく空を打った。


(・・・まあ、お陰で勝てたんだけどさ。)
 ヴァンはまだ拗ねたようにバルフレアの横顔を眺めながらムクれていた。
 いつだってアイテムを使って魔法はフラン任せだったから、てっきり魔法は苦手なんだと思ってたのに。
 魔法なら、この人にだって勝てるかもって思ってたのに・・・。

 そのヴァンの酸っぱい想いを断ち切るように、ふいにはっきりとしたノックが響いて分厚い扉が開いた。
「オンドール閣下のもとへご案内いたします。会見の準備はお済みですか?」





 そこはオンドール侯爵の執務室なのだろうか。ヴァンにはよく分からなかった。磨き上げられた重厚な木の調度が琥珀色の艶を放ち、植物を象った豪奢なランプに点る灯りが時代がかったタペストリーと続き部屋への扉をほのかに照らしている。控えめな灯りはその部屋の重厚さと密やかさを一層強め、入ってきた者の視線を自然と一際明るい部屋の奥へと誘った。
 正面の一番奥に、ベッドみたいに大きなデスクが置かれていて、ビュエルバの主、ハルム・オンドール4世がそこにいた。オレンジ色の分厚いクロスが掛けられたデスクを前にしたオンドール侯爵は、どちらかと言えば華奢で小柄に見えた。やや後ろから射すランプの灯りは侯爵の顔に深い陰を落として、表情はよく分からない。雪のような白髪が灯りを受けて淡い金色に輝いている。側近は、昼間見たレベ族が1人いるだけだ。
 ヴァンと二人の空賊は部屋の隅の陰の中に立ち、一人の男だけが、正面に進み出た。
 誰にも明かせぬ、秘密の会見     
 
「バッシュ・フォン・ローゼンバーグ卿     
 侯爵は冷ややかに口を開いた。
「私は貴公が処刑されたと発表した立場なのだが?」
「だからこそ生かされておりました。」
 バッシュの口調は淡々として淀みない。
 オンドール侯爵は深い息をゆっくりと吐きながら、両手をデスクの上で組み合わせて俯いた。
「つまり貴公は私の弱味か。ヴェインもおさおさ怠りない。」
 絞り出すように言葉を吐いた侯爵は、更に冷ややかな目でバッシュを見上げた。「    で?」
 老侯爵の視線をまっすぐに見つめながら、バッシュは軍人らしい感情を交えぬ声で言った。
「反乱軍を率いる者が帝国軍の手に落ちました。アマリアという女性です。」

(率いる?・・・あいつが?・・・)
 身を乗り出しかけたヴァンをバルフレアが後ろ手で押さえつけた。
「・・・お嬢ちゃんの順番が来るまでは静かにしてろ。」
 ヴァンは声を飲み込んで二人の男の対峙をただ見つめた。

「救出のため、閣下のお力を。」
 バッシュの言葉には非難も卑屈さも無かった。ただ真っ直ぐに現実を伝えた。
「貴公ほどの男が救出に乗り出すとは    
 オンドール侯爵はゆっくりと体を起こした。
「よほどの要人か。」
 バッシュはその言葉に何も答えなかった。何も言わずに一層背筋を伸ばすと、胸の前で堅い敬礼をした。
 ビュエルバの主は、しばし無言でそれを見上げた。そして、傍らの杖に手を伸ばすと、ゆっくりと立ち上がった。 微かに片足を引きながらデスクを廻り、侯爵は訪問者達が立つ陰の方へ歩いてきた。
「立場というものがあるのでな。」
 侯爵の静かな声は一切の感情を見せようとしない。ヴァンは我慢できずに目の前に立つビュエルバの主へと駆け寄った。
「ラーサーに会わせてくれ。俺の友達が一緒なんだ。」
 侯爵は走り出た少年を見て歩みを止めた。そして、驚いた様子もなくヴァンの方に向き直ると、杖に両手を置いた。
「・・・一足遅かったな。」
 ビュエルバの主はゆっくりと言葉を続けた。
「ラーサー殿の御一行はすでに帝国軍に合流された。今夜到着予定の艦隊に同行してラバナスタに向かわれる。」
「そんな・・・」
 ヴァンは大きな溜息と共に肩を落とした。





 星の海を黒い影となって飛空艇艦隊が静かに進む。中央に陣取る巨大な三稜型の戦艦リヴァイアサンの左舷から、小さな蒼い光が次々と吐き出される。ポッドのようなそれは一瞬で白と銀の翼を拡げると次々に飛び立っていく。その先には、プルヴァマ・ドルストニスとオンドール侯爵邸の魔石の翼が青白く輝いていた。
「ヴァルファーレの配置、1分後には整います。」
 戦艦リヴァイアサンのブリッジに士官の引き締まった声が響いた。だが、その士官もジャッジマスター・ギースの方を振り返ると、思わず本音を漏らした。
「しかし、ヴァルファーレを使う必要が・・・」
 困惑する士官をギースは鷹揚に制した。
「オンドールが真に鼻が利く男なら出番も無いだろうが、口先だけではこちらが足下を見られる。」
 遠ざかる飛空艇部隊の航跡を見ながら、ギースは兜の下で笑った。「使わずに済むならそれでいい。」
「・・・こちらとしても、可能な限りラーサー殿下のお休みを妨げたくはないのでな。」





「放せ!放せってば!」
 もがくヴァンをバルフレアが羽交い締めにして押さえ込んだ。
「早くしないと、パンネロが     」「やめろ!」
「ローゼンバーグ将軍。」
 オンドール侯爵は二人の騒ぎなど目にも入らぬ様子で、バッシュに向かって言った。
「貴公は死中に活を見いだす勇将であったと聞く。」
 僅かに怪訝な顔をするダルマスカの将軍に、ビュエルバの主は告げた。
    あえて敵陣に飛び込めば、貴公は本懐を遂げるはずだ。」
 ハッとして見返すその視線に、侯爵は僅かに頷いてみせた。
 バッシュは深い息をゆっくりと吐いた。鋭い視線は一層厳しく侯爵を射て、その手が静かに己の剣へと伸びた。
「おい!    
 察したバルフレアがヴァンを押さえる手をバッシュの方へ伸ばした時は、遅かった。
「悪いな。巻き込むぞ。」
 そう言うなり、バッシュは侯爵の目の前で白刃を抜き放った。
「侵入者を捉えよ!」
 煌めく刃の下でビュエルバの主の声が響く。すかさずレベ族の側近が脇のドアを押し開いくと、待ち構えたように警備兵達が雪崩れ込んできた。瞬く間にバッシュを拘束すると、火に集る蛾のようにヴァン達の方へ押し寄せる。バルフレアは小さく舌打ちすると銃に伸ばしかけた手を下ろした。
「ジャッジ・ギースに引き渡せ!」
「待てよ、何すんだよ!」
 ヴァンは警備兵の腕の間でもがきながら悪夢のデジャヴを見ているような気がした。
 将軍はいきなり剣を抜き、解放軍の味方のはずの侯爵は帝国に俺達を売り飛ばす     
「畜生!」
 ヴァンは叫んだ。

     パンネロを返せッ!!」
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