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Chap.6-2 I'm the General! -俺は将軍(1)- [Chapter6 再会]

 顔。
 顔、顔、顔      

 赤い光に照らされて、ヴァンの目の前を幾多の顔が通り過ぎる。
 帝国兵の傲慢な顔、猛々しく怒鳴る顔。
 子供達の泣き顔、怯えて震える顔。
 血に染まった兵士の顔。冷たく歪んだ土色の死に顔。
 虚ろに沈んだ、兄の顔    

 赤い光が強くなって、兄の白い顔を血のように照らした。


 黒い甲冑と大マントが死の影の様に兄の姿に被さる。鮮血のような紅の紋章が兄の姿を締め付けるように覆っていく。
 ヴァンの中の血がカッとたぎった。
 たが、ヴァンはハッとして後ろを振り返った。
 ヴァンの周りで、ラバナスタの大人達が憎悪に満ちた目でヴァンを睨んでいる。昨日まで気さくに声をかけてくれたその顔が、ヴァンの大切なものを口汚く罵っている。・・・裏切者、と。
 その顔がヴァンの目の前を埋め尽くす。赤い光が見えないほどに。青い空が見えないほどに。
 ヴァンはその顔に向かって叫んだ。
「何が裏切者だ!お前らが俺と兄さんを裏切ったんじゃないか・・・!」
 ヴァンが拳を突き出して振り払おうとすると、顔達は卑屈に媚びた笑顔になって消えた。
 だがそれでも、たった一つの顔は残っていた。

 アマリアが一人、こちらを見つめている。
 大きな瞳に憎しみと侮蔑をたぎらせて、
 血のように赤い、不思議な光を浴びながら      

 ヴァンは彼女の目から顔を背けた。
 見回しても、何も見えない。青い空が、どこにも見えない。
「空に逃げても、何も変わらんぞ!」
 バルザックの声がする。
「余計な荷物はさっさと降ろすんだな。     翼が重いと空は飛べないぜ。」
 からかうようなバルフレアの声がする。
「そんなことない!」
 ヴァンは怒鳴った。

      でも、一体どうすれば飛べるんだろう?

「どうしたの?ヴァン。」
 ふいに響いた声は、ヴァンの耳に朝の小鳥の囀りのように心地良く響いた。
(パンネロ?・・・)
 そうだ。パンネロの声だ。
 彼女が側にいるということは、ラーサーが送り返してくれたんだろうか。それとも、誘拐された話は全部自分の夢だったのだろうか。
 目をこらすと、優しいお日様みたいな光の向こうに、パンネロの顔がぼんやりと見える。
 よく見ると、彼女は泣いているようで、怒っているようにも見える。
 ヴァンの胸がズキンと痛んだ。
 すると、彼女の顔は蕾が綻ぶように和らいで、にっこり笑った。
 それを見たヴァンは、まるで救われたように心が安らぐのを感じた。
 まるでいい匂いのする洗いたてのシーツでふんわりくるまれたみたいだった。
(パンネロ・・・)
 だが彼女の目はヴァンとは違う方向に向いてしまった。
 その蜂蜜色の瞳は一心に誰か別の人間を見ている。
(パンネロ!)
 ヴァンは彼女に向かって両手を伸ばした。だが、彼女は少しも近づいてこない。
 延ばした手が、届かない。

 一体自分は、パンネロを助けようとしてるんだろうか、
 それとも、自分がパンネロに助けてもらいたいんだろうか。

 優しく微笑む彼女の顔が近づいてくる。 
 蜂蜜色のおさげ髪に勿忘草色の羽根飾りが揺れる。
 顔を寄せると甘い香りと柔らかな羽根が、ヴァンの鼻を優しく撫でる。

 ふにふに・・・
 ふにふに・・・
 ふにふに・・・



「ふに?・・・」
 ヴァンのまぶたが今度こそ本当に上がった。何か柔らかいものが鼻の頭をくすぐっている。何だか目の前に、フワフワで・・・丸い・・・真っ赤なボンボンが・・・
「何だぁ?!」
 ヴァンは素っ頓狂な声をあげてガバッと飛び起きた。窓から差し込む光に一瞬細めた目が、自分の右手が捕まえている物を見た途端にまんまるに開いた。
 丸くてふかふかの赤いボンボン。その下にぶら~んとぶら下がっているのは、大きな耳に緑の帽子の・・・
「ノノ?!」
 緑のつなぎに緑のナイトキャップ・・・いや、とんがり帽子を被った茶鼠色のモーグリは、ヴァンの鼻先にぶら下がったまんま、トロンとした目を開けた。
「・・・あ、おはようクポ・・・    って、何してるクポッ!降ろすクポッ!」
 ぶら下がったままジタバタもがくノノを放り出すようにして手を放すと、ノノはぺちゃっとベッドの上におっこちた。
「なんでノノがここにいるんだよ!?シュトラールにいるんじゃなかったのか?」
 まだ唖然としているヴァンに、ノノは澄ました顔で起き上がると、大きな耳を丁寧になでつけながら言った。
「何言ってるクポ。モグだって港に着いた時ぐらいふかふかのベッドで寝たいクポ。」
「でもシュトラールのメンテは?」
「モグのことを甘く見てもらっちゃ困るクポ!ヴァン達が魔石鉱でモタモタしてる間にメンテナンスもバッチリ終わって、シュトラールは正真正銘の絶好調クポ。ビュエルバは腕のいい機工士モーグリもたくさんいるから、あとは港のドックに任せておけば心配ないクポ。」
 そう言って緑の帽子を被り治したノノは、とっくに起きて身仕舞いも済ませているバッシュに向かって小さな手を挙げた。
「将軍閣下もおはようクポ。昨日は飛び入りしてゴメンクポ。」
「ベッドは狭くなかったかな?二人が帰ってこないのなら、空いているベッドで寝てくれて良かったんだが。」
 二人のやりとりを苦笑混じりに見ていたバッシュに、ノノはあくまでもすました顔で答える。
「大丈夫クポ。ヴァンは意外に寝相が良かったクポ。」
「意外は余計だろ。・・・そういえば、バルフレアとフランは?ノノを手伝いに行ったんじゃ・・・」
 ヴァンは寝た様子のない2つのベッドに目を遣りながら言った。
「船をちょこっと見た後、すぐに二人とも街に飲みに行ったクポ。朝方帰って来た音がしてたから、今頃はシャワーでも浴びてるクポ。」
「朝まで酒飲んでたのかよ?!けっ!いい気なもんだな。」
 ヴァンが呆れた声をあげた時、当の本人達が部屋に戻ってきた。
「なんだ、まだ寝てたのか?」
 さっぱりと髭をあたったバルフレアは酒の臭いなどおくびにも出さずに涼しい顔で二人に言った。さっそく弓の手入れを始めたフランが生乾きの白い髪を振ると、朝露を載せた若葉のような涼しい香りが部屋中を満たした。
「早く朝飯を食ってこい。すぐに出るぞ。」
 バルフレアの声にノノがベッドの上でぴょこんと飛び上がった。
「クポー!まだ宿の名物の『コッカトリスの卵のふんわりオムレツ』を食べてないクポ!」
「え?!それ俺も食う!」
 少年とモーグリは転がるように部屋を飛び出していった。






 バタバタちょこちょこと二人の足音が遠くなっていく。バルフレアはすっかり支度の調ったバッシュを見て言った。
「子供のお守りで寝ずの番だったんじゃないだろうな。」
「いや、久しぶりにゆっくり眠らせてもらった。いい宿だ。」
「何も無い宿だが、客の素性を詮索するようなお節介も無い事は保証する。次があったらアンタも飲みに出るといい。ここの酒場はなかなかいい酒を出すぜ。」
「そうだな。」
 そう答えて部屋を出ようとするバッシュの背に、バルフレアの声が飛んだ。

     3日前、ここの駐留艦隊にダルマスカ方面からの船が接触したらしい。」

「!!」
 空気がビリッと震えたかのような緊張感が走った。扉を押す手を止めたバッシュに、落ち着いた声でフランが続けた。
「ジャッジの艦のようね。前触れもなく、突然現れた。」 
「・・・探りに行ったのか?」
「聞こえたのさ。」
 バルフレアははぐらかすような笑みを返した。
「王子様が無事に帰ってきて、帝国の連中もイイ気分で羽根をのばしてたんでね。・・・ガルテア半島じゃ怖い者無しの第8艦隊の連中が、『1日遅く来られたらどうなってたか』と肝を冷やしたって言うんだ。誰が来たかは想像がつく。」
「・・・ジャッジマスター統括。」
 呻くようなバッシュの声に、バルフレアは頷いた。
「結局、王子様が冒険を始める前に何事もなく本国へ向かってくれて、連中は命拾いってところさ。今朝は酒の臭いで懲罰を喰らう奴が山ほどいるだろうな。」
「では身柄は既にアルケイディア本国に・・・いや、しかし・・・」
 首を振ったバッシュの言葉をフランが引き取った。
「ヴェインの立場からすれば、彼女を大っぴらに本国に移送するわけにはいかない。それに、ダルマスカにいる彼が西方総軍の管轄外へ大事なものを手放すかしら。」
「意外に近くにいるのかもしれないぜ。・・・金の小鳥は。」
 バルフレアはそう言って、いまだ手をノブにかけたままのバッシュをやり過ごして先に扉を開けた。
「何にしろ、王子様は明日にでも国に帰るって話だ。お嬢ちゃんを連れ帰るなんて気を起こされないうちに、さっさと侯爵様に拝謁願うぜ。」
 先に立って歩き出したバルフレアが、話しながら大きく腕を伸ばして伸びをした。ろくに寝てもいないのだろうが、若者の仕草に疲れらしきものは見えない。並んで歩き出したバッシュが言った。
「寝る間も惜しんで随分熱心に調べてくれたものだ。相手が帝国なら君はもう免責じゃないのか?」
 穏やかな物言いの中に鋭い氷の欠片が光るようなその声に、振り向いたバルフレアは挑発するような笑みを返した。「おいおい、呼び出されたのは俺だぜ     

     主役を誰だと思ってる?」




 


「はぁ~、喰ったー!!」
「お待たせクポ~!」
 ヴァンとノノが支度を終えて宿を出ると、先に待っていたフラン達の姿を見て男達が声をあげるのに出くわした。
「お、ヴィエラだ!」
 相変わらず下心丸出しの驚きの声だ。鼻の下を伸ばした男がウキウキした顔で周りのツレを見回した。
「お前ら、昨日の晩一緒に飲んだんだって?羨ましいねぇ。」
 だが、今朝の男達の様子は昨日とは打って変わって、酷くしょぼくれている。
「よしてくれ!こっちは酷い目に遭ったんだから。イテテ・・・」
「まったくだ。災難だったぜ・・・」
 よく見ると、どいつもこいつも顔のあちこちに痣を作っていて、腰をさすったり、足を引きずったりしている。
「ちょっとした酒の席の出来心ってやつなのによぉ・・・」
「目の前であの胸が弾んだら、普通触るよなぁ?」
「鼻先であの尻が揺れたら、普通なでるよなぁ?」
「それを予告も無しにハイヒールで踏むか?あいたた・・・」
「間髪入れずに膝蹴りするか?うぐぐぐ・・・・」
「俺達がちょーっと触っただけなのに、3月の兎みたいに跳び回って殴るわ蹴るわ引っ掻くわ・・・」
「お、俺まだアソコが痛くて便所に行けねぇ・・・」

「・・・フラン、またやったんだな。」
 ナルビナの地下雑居房でヨロヨロしていたバンガを思い出しながらヴァンが言うと、フランは鼻一つピクリともさせずに涼しい顔で答えた。
「これでも随分遠慮したのよ?」
「・・・・。」
 ヴァンは、肌も露わなブロンズ色に輝くフランの胸と尻に目を遣りながら、男達に同情せずにはいられなかった。ヴィエラの服装はいつだってこんなものだが、ヴァンだって男だ。あんまり見てると下のアソコがもぞもぞしてくるが、大事なアソコの為には見ない振りが一番らしい。兎にも角にも、フランが直々にキツイお灸を据えてくれたのなら、今日は静かに街を歩けそうだ。
「じゃあ、モグは飛空艇ポートに行ってるクポ!」
 黄色いリュックを背負ったノノは、元気に手を振るとヴァン達にクルリと背を向けた。
「いつでも出られるようにしておけよ!」
「らじゃークポ!じゃあ、みんな頑張るクポー!」
 石畳の通りの向こうにモーグリの小さな体が消えると、ヴァンは3人の大人達の方を振り返った。
「それで、これからどうやってパンネロを助け出すんだ?侯爵邸の衛兵に『ラーサーの知り合いだから会わせろ』なんて言っても絶対通してくれないぜ。アポがなけりゃ偉そうな帝国人だって追い返されてたし。」
 だが既に相談はついていたのだろう、3人とも意に介したように頷いた。
「アポが要るなら取らせればいいのさ。・・・取れる奴にな。」
「え?」
「侯爵は反帝国組織に金を流してる。そこを突く。」
 バルフレアの言葉に、ヴァンはしっくりこない様子で首を傾げた。
「そうは言うけど、本当に侯爵って解放軍に資金援助をしてるのか?あんなに帝国にペコペコしてるのに?それも・・・」
 そこでさすがのヴァンも当たりをチラリと見て声を落とした。
「・・・質の良い魔石は特別にヴェインだけに流ししてるって、魔石鉱で言ってたじゃないか。あいつ、どれだけヴェインに肩入れしてんだよ。」
「片方に肩入れしてるからといって、もう一方には肩入れしていないってことにはならないわ。」
 フランの言葉にバルフレアも頷いた。
「ああ、相当のパトロンも無しに組織だった抵抗運動が2年も続くはずがない。ビュエルバが帝国に魔石を売って得た資金が、反乱軍に流れてる。」
「だから・・・?」
 まだ戸惑ったような顔を向けるヴァンに、バッシュが言った。
「オンドール侯は2年前、私が処刑されたと発表した人物だ。私の生存が明るみに出れば、侯爵の立場は危うくなる。」
「侯爵を金ヅルにしてる反帝国組織にとっても面白くない事態だろうな。」
 そう言って、バルフレアは「もう分かっただろう?」とでも言うようにヴァンに言った。
「『バッシュが生きてる』って噂を流せば、組織の奴が食いつくんじゃないか?」
「それってさ・・・」
 ようやく意味が分かったヴァンは、その意味の苦さに顔をしかめた。
「それって、真実より金が大事っていうことか?金のためには無実の人間も邪魔なだけってことか?・・・酷いな。」
「それが”現実”って奴さ。」
 事も無げに言うバルフレアに、バッシュも静かに頷いた。
「問題は、どうやって素早く噂を流すか、ね。」
「だったら、俺が街中で言いふらしてくるよ。」
 フランの言葉に、さもあっさりとヴァンが答えた。
「こんな風にさ。」
 そう言ってヴァンは通りを駆け上がって三叉路のど真ん中に立つと、行き交う人々を前に仁王立ちになった。そうして親指で自分を指さすなり、ありったけの大声を張り上げた。

「俺がダルマスカのバッシュ・フォン・ローゼンバーグ将軍だ!!」

 突然耳に飛び込んだ少年の怒鳴り声に、通行人がギョッとして振り返った。唖然とした人々は、声のした方に少年の姿を目にするとしばし顔を見合わせていたが、すぐにニヤニヤ笑ったりヒソヒソささやきながら再び歩き出した。
「・・・どうだ?」
 カエルの面に何とやら、といった調子でケロッとして尋ねてくるヴァンに、バルフレアは『こっち見んな』と言わんばかりの渋い顔で唸った。
「・・・まあ、目立つのは確かだな。」
 そう言ってチラリと脇を見ると、当のダルマスカの将軍は腕組みしたまま彫像のように固まっていた。一瞬気の毒そうな目を向けたバルフレアは、吹っ切れたようにヴァンに声をかけた。
「よしヴァン、お嬢ちゃんを助けるためにも、やるだけやってこい。できるだけ人の多い場所でな。」
「わかった!任しとけよ!」
「オンドール侯爵と接触できるかどうかはお前次第だ。俺達はここにいる。何かあったら戻ってこい。」
 バルフレアの声を背中に受けながら、ヴァンはトラヴィカ大通りの方向に元気に駆け出していった。







「・・・大丈夫なのか?一人で行かせて。」
「せっかくやる気になってるんだ。乗ってやろうぜ。 」
 苦笑いするバルフレアに、なおも心配げにバッシュは言った。
「しかし、本当に何かあったら戻って来れまい?」
「まあ、そうだが・・・」
 そう言ってバルフレアは難しい顔で遠くに見えるヴァンの姿を見遣った。

「みんな聞けよ!俺がダルマスカのバッシュ将軍だ!!」
「え?生きてたのか?!」 「そうさ!驚いたか?」
「まあ、こんなに若い人だったとはねぇ・・・」 「え?・・・」
「もっとオーラのある人だと思ってたが、大したことなかったんだな。」 「・・・。」
「空気みたいだブ。俺、がっかりだブ・・・」 「わ、悪かったな!」

「ついて回るのは新手の拷問みたいなもんだぜ?」
「・・・。」

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六畳半

こんにちは!
ちょっと前から読ませてもらってます
オリジナルのサイトの方には感想投稿とかできないっぽいのでこちらに

まだ序盤の方しか読んでいないのですが
エルファさんの文章力というか、表現力に脱帽です

元々自分も、FF12はノベライズしたら絶対面白いよなあと思っていました
壮大で魅力的な世界観は本当に感動モノです
今となってもたまにプレイしてはぶらぶらしてます
戦闘システムも大好きで、初めてレベルをカンストさせたRPGでもあります

ストーリやキャラクターに批判がありますが、それを差し引いても魅力溢れる作品ですよね

個人的にはレックスがもっとたくさん話に絡めばヴァンが映えるし、ロザリア帝国にも行って欲しかったなあと思います

話が脱線しました(;^_^A アセアセ・・・

最後に、更新がちょっと停滞しているみたいで残念ですが
続きを楽しみに待っています(まだここまで読んでないですが・・・)

とにかく。応援してます!気長に頑張ってくださいね(-ω-)
by 六畳半 (2010-03-31 19:04) 

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