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Chap.5-7 The Sunia Parallel Bridges -スーニア平行橋- [Chapter5 空中都市]

 精緻な石組みが連なる巨大な坑道も、やがてだんだんと細くなり、奥へ進むほどに剥き出しの土壁に変わった。空気も徐々に湿り気を帯びて重く淀んでくる。冷たく鈍く光るトロッコレールに沿って駆け足で緩いカーブを曲がると、再び眩しい外の光と強い風がヴァン達を見舞った。「また橋か。」
 ヴァンは眩しさに目を細めながら見回した。
「さっきの橋よりずいぶん大きいな。・・・ほら、あっちにもトロッコのレールが走ってるぜ。」
 ヴァンが指さした向こうには、目の前の橋と並ぶようにしてもう一本の空中橋が坑道から坑道へトロッコレールを渡している。
「スーニア平行橋・・・この魔石鉱で一番長い空中橋ですね。」
 地図を見遣るラモンの小柄な姿と、それを包むような青空と雲と橋が為すダイナミックな風景に、ヴァンは思わずつぶやいた。
「こんな景色、カイツやフィロが見たら喜ぶだろうなぁ・・・」
 あいつらだって、空と自由と冒険にいつも憧れて     
「観光気分で渡るとまた怪我するわよ。」
「うっ・・・」
 相変わらずフランの声は冷静で厳しい。
「分かってるよ!」
 ヴァンはトラップで散々に煤けた顔を意地でも上げると、肩をそびやかして目の前の橋を睨みつけた。
「よし、今度は堂々と真ん中を行ってやる!」
 そう言って枕木を蹴ってトロッコレールの上をヴァンが駆け出すと、
    おいでなさったぜ。」
 言葉より早く銃弾が乾いた骸骨を錆びた鎧ごと撃ち砕いた。
 バラバラと散る骨くずを押しのけるように、レールと枕木の間から次々におぞましい骸骨達が次々に姿を現した。
 風の中に胸糞が悪くなる生臭い臭いが混じる。
「なんで明るい場所でもアンデッドが湧くんだよ!」
「それだけミストが濃いってことよ。」
 銀の髪をなびかせてフランが言った。
「魔石鉱の濃いミストは魔物を呼び寄せ、場合によっては凶暴に変異させるわ。    ファイア!」
「ウガァァッ!!」
 肉の焼ける臭いと共に骨が灰となって砕けた。
「畜生・・・」
 ヴァンはギリッと歯を食いしばると、日差しを受けて赤黒く光るアサシンダガーを片手に錆びた甲冑をまとった骸達に襲いかかった。
「死体は大人しく土の下で寝てりゃいいんだ!」
 白い骨と腐った肉が坑道に飛び散る。
 屍の奮う血錆のついた槍ごとバッシュの剣が両断にする。
 血の臭いに誘われて舞い寄るスティールがフランの矢に射貫かれて落ちれば、
 その上に弾丸に砕かれた骨がバラバラと降り注ぐ。
「よし、あと少し・・・」
 ヴァンの目の端に最後の1体がユラリと起き上がるのが映った。暗い穴からこっちを見ながら、骸骨は呪わしい声を上げようと歯の抜けた顎を開く。
 その瞬間、レイピアが一閃、飛んだ首はレールに跳ねてカランコロンと間の抜けた音をたてた。
「大丈夫ですか?!」
 忌まわしい魔物相手にひるみもしないラモンに、
「お前こそ!」
 と笑って見せたヴァンだったが、
「うわっ!!」
 突然背中いっぱいに焼け付くような衝撃を受けてつんのめった。
 すかさずラモンがレイピアと鍵型に輝く盾を構え直して向かっていく。
「え?・・・ちょ、何だよ・・・」
 振り返ったヴァンは絶句した。
 倒し終えたと思ったのもつかの間、ゾンビ達は絶えることなく地から湧いてこちらへ向かってくる。
 その一体がカタカタと顎を鳴らすと、生ける屍から炎が吹き出した。
「熱ちぃ!!」
 転がるようにしてなんとかかわすと、ヴァンは短剣を構え直して大きく息を吐いた。
 なんて奴らだ。
 倒しても倒しても、まるで砕いた骨が更に新たな化け物を産むかのように、目の前の地面から次々にゾンビ達は湧き続ける。
「畜生!」
 ヴァンはファイアをくらった痛み以上に無性に腹が立った。明るい日差しの下で、腐った死体が我が物顔で向かってくるなんて。
 また不気味に顎を鳴らす骸骨から飛び退りながらヴァンは思った。
(・・・やっぱメイジマッシャーを持ってくればよかったかな。)
 ヴァンは赤黒い短剣を振りかざしながら唇を噛んだ。より威力のある短剣だとシャルアールって帝国兵は教えてくれたけど・・・
 二度三度と骨を砕くように短剣を振り下ろしながら、
「アサシンダガーは一撃で倒す力があるって言ってたのに!」
 思わず悲鳴を上げるヴァンに、傍らのラモンが言った。
「それって、もう死んでる相手にも効くんですか?」
「えっ?・・・」
 ラモンの言葉にヴァンの頭が真っ白になった。
 一撃で倒せるって、まさかアンデッドには効かないとか     
 そのヴァンの隙を嘲笑うかのように、目の前の骸の顎が炎の呪文を唱えた。
(しまった!    
「ウァァ・・・ェッ!!」
 思わず目を閉じたヴァンの頭の上に降り注いだのは、熱い炎ではなく耳をつんざく銃声と息の詰まった嗄れ声だった。
「え?」
 目を見張ったヴァンの前で、下顎が砕けた骸骨がカタカタと調子が狂ったように震えている。ヴァンは息をつかせず飛び込むと、体当たりするようにして生ける骸をバラバラに砕いた。
 振り返ると構えた銃越しにバルフレアがチラリとこちらを見て笑った。
「バルフレア、今の・・・」
「サイレント弾。ナルビナ帰りの戦利品だ。」
 返事と一緒に銃声が響いて、また側に湧いた一体の顎が砕けた。「    ガタガタ言う奴は俺が黙らせる。」
 思わずヴァンの頬が緩んだ。笑いそうな声で減らず口をたたく。
「どうせ俺からピンハネしたおたからで手に入れたんだろ!」
「悔しかったらしっかり懐を狙えよ。骨くずはウマいぜ。」
「任しとけって!」
 ヴァンは背中がすっと軽くなった気がして、ヴァンはゾンビのまとう錆びた鎧に輝くトパーズの金色に向かって飛び込んだ。


「岩砕き、骸崩す、血に潜む者たち・・・集いて赤き炎となれ!    ファイア!!」
 フランの声が響く。たちまち巻き起こった炎が蠢く骸を焼き尽くす。
 それでも忌まわしいゾンビ達は橋上の線路から染み出すように湧き続ける。
 骨と錆びた剣の下をかいくぐりながら、ヴァンは歯を食いしばった。
「くそっ!俺だって!」
 いつもいつも魔法攻撃に鼻先を火傷してなんかいられない。こっちだって魔法の一つや二つ・・・
「確かこいつらは火に弱いんだよな。ファイアの呪文は・・・えーっと・・・」ヴァンはフランの方を振り返った。
    何て言うんだっけ?」
「覚えてないの?!」
 この期に及んで首をかしげるヴァンに、いつもポーカーフェイスのフランも思わず目を丸くした。
「ずいぶん魔法書を買い込んでたみたいだけど?」
「買ったけど覚える暇が無かったんだよ!」
 ヴァンは決まりの悪さを誤魔化すように叫んだ。
「余計な荷物は持って行くなってバルフレアが言うしさ!!」「・・・覚えてなけりゃ同じだろうが。」
 虚しくやりあっているヴァンの背に、バッシュの声が飛んだ。
「君でも使える魔法があるんじゃないか?」
「え?」
 ヴァンはポカンとして剣を奮うその方を振り返った。だがバッシュはもうヴァンに背を向けて剣を奮っている。
「・・・俺が覚えてるのってケアルぐらいしか・・・あ、そうか!」
 ヴァンは目を輝かせて尽きることなく湧いてくる骸骨兵士達を見遣ると、ペロリと舌なめずりをした。
「よぉっし!・・・」
 ヴァンはゴクリと唾を飲み込むと、腹の底から声を張り上げた。
「・・・清らかなる生命の風よ、失いし力とならん!」
    ケアル!!」
 ヴァンから延びた青白い光がゾンビの群れを包む。
「ギヤァァァッ!!」
 おぞましい断末魔の叫びと共に、腐った肉と白い骨がバラバラと砕け散った。
「すげぇ!ファイアより効くんじゃないか!?」
 ヴァンは飛び上がらんばかりに歓声をあげた。
 そうなのだ。生者の生命力を蘇らせる回復魔法は、亡者達には身を滅ぼす攻撃魔法となるのだ。回復薬であるポーションもアンデッドにとっては毒薬も同然だ。・・・あんな青くてマズいもの、自分達の体にも悪いんじゃないかとヴァンは時々思うのだが。
「よぉーし!見てろよ!」
 ヴァンは止まず湧いてくる骸骨に向かってニンマリと笑った。

「ケアル!」
「ケアル!!」
「こっちもケアル!!!」
「イテッ!!詠唱中に攻撃するなんて卑怯だぞ!お前にもケアル!!」
「ハッハッハ!やっぱ魔法ってスゲーなぁ!」

「・・・あの馬鹿。調子にのりやがって。」
 もう呆れることにも飽きたという顔で、バルフレアがつぶやいた。
「放っときゃいいのさ。場数を踏めば戦い方なんざ自分で覚える。」
 バルフレアはバッシュに恨みがましい一瞥をくれると、ヴァンに向かって怒鳴った。
「おいヴァン!いい加減に振り切って先に行くぞ!!」
「でもここって骨くずが拾い放題・・・あ~仕方ないか!」
 骨くずをたくさん売り払ってパンネロに何かちゃんとしたプレゼントでも買ってやろう・・・チラリとそう思ったのだが、手段のために目的を忘れては意味がない。ヴァンはまだ湧いてくる骨達をかき分けるようにして駆け出すと、先を行く4人を追い越して、再び暗い坑道へと駆け込んだ。


    ケアル!!」
「ギャァァ!!」
「へへっ!楽勝楽勝!」
 ヴァンは目の前に立ち塞がる骸骨達に向かって、おたからを狙うのもそぞろにケアルを連発する。ヴァンらしくもなく?滑舌も滑らかに繰り出されるとっておきの回復魔法はアンデッドに面白いようにダメージを与えてくれる。
 大きくカーブした坑道をまっすぐに走っていくと、ほどなくトロッコレールが車止めで行き止まりになった。正面は石組みの頑丈な壁が立ち塞がって行き止まりになっている。右手には狭い階段が下ってその先は真っ暗だ。左手にはすれ違いも出来ないほど狭い側道が延びていて、のぞくとすぐ向こう側に別のトロッコレールが走っている広い坑道が見える。
 地図からすれば、どちらから行っても最奥の第三鉱区採掘場に繋がっているはずだ。どちらかと言えば近道なのは・・・
「こっちかな。」
 ヴァンは左側に入る側道へ駆け込んだ。
「おい!一人で先走るな!」
 バルフレアの声も置き去りに、さっさと走っていくヴァンの後ろから、ラモンを筆頭に4人が一列になって後に続いた時、
 
 どっかーん!!

「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・痛ぇ~・・・」
 潰れたカエルみたいに這いつくばって、ヴァンは呻いた。
「・・・またですか。」
 ラモンが溜息をついた。巻き添えをくって上等の服も艶やかな黒髪も煙と埃で台無しだ。
「とんだとばっちりだな・・・」
「側道にはトラップが多いって言わなかった?」
 空賊二人も埃を払いながら当然の愚痴をこぼす。
「そんなこと言ったって・・・」
 ヴァンは返す言葉もなかった。トラップの爆発に吹っ飛ばされて、ゴムボールみたいに側道の壁に叩きつけられたのだ、体中がガクガクしていて息を吐くのも苦しい。
 その時、バッシュの鋭い声が響いた。
「来たぞ!」
 駆け出す4人の足の間から、側道に入ってこようとするゾンビの群れが映った。
「表に出ろ!ここじゃ狭すぎる!」
 バルフレアの声に急かされるまでもなく、バッシュの剣が骸の群れを押し返す。ギリリと鍔迫り合いの音が響く下で、ラモンもレイピアを手に怯まず前に出る。
「え?!ちょ、まだ・・・」
 まだ一人喘いでいたヴァンは、砂だらけの唾を吐くと埃でごわつく舌で急いで呪文を唱えた。「清らかなる生命の風よ、失いし力とならん!    
    ケアル!!」

「・・・あれ?」
 何も起きない。
「ケアルッ!!」
 だが、出てきたのはまとわりつくような嫌な脂汗だけだった。「しまった    
     魔法を使いすぎた!」
 後悔した時は後の祭りだ。ヴァンの目の前の地面が白っぽく色に変わったかと思う間もなく、生臭い臭いと共に骸骨がニョキニョキと姿を現した。
「うわぁ!・・・」
 ヴァンは立ち上がる事も飛び退ることもできず、腰が抜けたように後ろ向きにジタバタと後ずさりする。だが蘇った亡者はガクガクと歪に足を交わしながらまっすぐに近づいてくる。
「ちょ、待てって!・・・」
「チッ!」
 ヴァンの悲鳴に振り向いたバルフレアが、忌々しげに舌打ちして銃を降ろした。這いずるヴァンに向かって、スッと息を吸う。
 その時、後ろから押しのけるように誰かがぶつかった。同時に傍らから青白い光が延びてヴァンを包んだ。ヴァンは間一髪で起き上がると、何とかアサシンダガーを構えて一息ついた。
「大丈夫か。」
「あ、うん。」
 バッシュの声に、ヴァンは短剣を骸のまとう鎧の隙間にねじ込みながら答えた。身をよじる骸骨の脳天をバッシュの剣が打ち砕く。
「おい将軍!!」
 いつになく苛立ったバルフレアの声に二人は共に振り返った。側道の外の逆光の中で、バルフレアの影が怒鳴った。
「何をやってるんだ、坊ちゃん一人を盾役にする気か?!」
 ヴァンがバッシュに続いて側道から大坑道に戻ると、そこには湧き出る骸骨達が糸に引かれるようにして次々に集まっていた。ゆっくりと、だが次々に繰り出される錆びた剣と槍に向かって、ラモンが一人、果敢に前に出てレイピアを振るっている。
 ラモンは目の前のゾンビが繰り出す剣に怯まず豪奢な盾を突き出す。鍵型のスリットに巧みに相手の剣を絡めて動きを止める。
 だが、力任せに腕を振り回す相手に小柄なラモンの体が盾ごと宙に浮いた。
「わっ!」
 バランスを失ったラモンの体がドサリと地に落ちる。それを見たフランが弓を投げ捨て、足下に斃れた骸骨から槍を取り上げるとラモンの前に躍り出た。我が身同様、強靱にしてしなやかな槍一閃、群がる骸骨の群れを一気になぎ払う。
「ソードブレイカーを使いこなそうなんて10年早いぜ。」
 ラモンを自分の背後に押しやりながらバルフレアが言った。
「坊やの細腕じゃ振り回されるのが関の山だ。受け流すことだけ考えろ。」
「はい!」
 ラモンはしっかりした足取りで立ち上がると、埃に汚れた顔を上げた。




 


 バッガモナン達の足が止まった。
「きゃっ!」
 引き立てられるようにしてついて来たパンネロは、思わずその大きな猫背の背中にぶつかった。
 バンガ達は垂れた耳をピクリとそばだてて、当たりの様子をうかがった。薄暗い坑道はいつの間にか四方を頑丈な石で囲まれて、天井も高くなっている。ギジューがこっくりと頷いてみせると、バッガモナンはパンネロの手鎖を乱暴に引っ張った。
「来い!」
 バッガモナンは十字に分かれた坑道、左に向かってパンネロを引き立てた。
 よろめくように続くパンネロを、後ろからリノの突き刺すような声が追う。
「ほら、キリキリ歩くんだよ!ノロマな子だね!」
 物音一つしない坑道に4人の乱れた足音だけが響く。
 突然、前を行っていたブワジが振り返った。その指さした方向を見ると、通路脇に採掘用具をしまう狭い穴蔵のようなものが口を開けている。と思う間もなく、にバッガモナンはパンネロをその中に乱暴に突き飛ばした。
「きゃあっ!!」
 手を縛られたままのパンネロは肩から倒れ込んだ。振り返ると、彼女を取り囲むようにバッガモナン達も穴蔵の中へ入ってきた。
「へっへっへ・・・」
 僅かに後じさりするパンネロに、バッガモナンの緑の鼻面がパンネロにのしかかるように迫る。
 ピアスだらけの鼻面の下から、ノコギリのような黄色い歯がのぞく。
「ここら辺で丁度よさそうだな、あン?」
 ニヤニヤ笑うバッガモナンにブワジとギジューも頷きながらこちらへじりじりと寄ってくる。
 パンネロは声も出せずにただ喘ぐような息をしながら、目で逃げ場を探した。だが目の前をバッガモナンとギジューとブワジの大きな体が塞いでいく。
 男達の腕が伸びる。
 虚しく彷徨うパンネロの瞳から涙が溢れた時、穴蔵の入り口を塞ぐように立つリノの残酷な視線とぶつかった。
 リノは舌なめずりをするようにパンネロを見つめながら、甘ったる声でゆっくりと言った。
「ここらにはねぇ・・・怖~い奴らが一杯いるんだよ。」


「・・・う~んと・・・怖い奴らがね。」







「やれやれ・・・誰かのせいでとんだめに遭ったぜ。」
 フェンスにもたれたバルフレアが、銃の手入れをしながら聞き飽きた愚痴を言った。もっとも、本人は「言い飽きた」と言うだろうが。
 しぶとい骸骨達を振り切って側道の奥へと来て見れば、その先の坑道の先は頑丈なフェンスが降りていて進むことが出来なくなっていた。ならば再び側道を戻ってさっきの階段を降りなければならない。地図にはこんなフェンスは書かれていないのだが。
「あんたもあんただ。」
 ムスっくれたヴァンが何も言わずにいると、バルフレアはバッシュに水を向けた。
「パーティは5人いるんだぜ。後ろの心配はあんたの仕事じゃない。・・・2年も穴蔵にいるうちに錆びついちまったんじゃないか?」
「すまなかった。」
 あまりにも率直なバッシュの言葉に、誰もそれ以上の言葉を続けることが出来なかった。
 まるで羽ばたくコウモリの羽音でも聞こえそうなほど、気まずい沈黙が流れた。
「あの、僕は・・・」
 ラモンが気を遣ったようにバッシュに声をかけようとした。
「俺が悪かったよ!」
 ヴァンはそう怒鳴って立ち上がった。
「俺が勝手にトラップにかかったのが悪いんだろ?魔法を使いすぎたのが悪いんだろ?!」
 ヴァンは意地になって喧嘩腰になって言った。そう言うしかなかった。本当のことなのだから。
「・・・でも、あんたに頼んだわけじゃないからな。」
 ヴァンはボソリと言うと、再び側道へ向かって歩き出した。


 小柄なラモンと背の高いフランの間を歩くヴァンの背中を見遣りながら、バルフレアは隣の男に言った。
「『仲直り』したんじゃなかったのか?」
 バッシュはそれには答えずに僅かに目を伏せた。
「今更終わったことをいくらなぞったって何も変わりはしない。塞がったかさぶたを弄るようなことをしても、あいつはイラつくだけだ。」
 やはり無言で、バッシュは前を行くヴァンの背中を見ていた。その背に二年前のナルビナで出会った少年の姿を見ているのだろうか。
「・・・半端に引き摺ってると、そのうち身を滅ぼすぜ。あんたも・・・あいつも。」
    確かに、錆び付いているのかもしれんな。」
 バッシュは言った。
「止まった時間が動き出した途端、逃げていたもの総てが彼と共に目の前に突きつけられた。私はまだ総てを受け止めることに迷いがあるのかもしれない。・・・戸惑う猶予も資格も、私には無いのだが。」
 その言葉に、バルフレアは少し驚いたような顔をした。一国の将軍を務めた男が若い空賊に返す言葉は、正直過ぎるほどに率直だった。
 バルフレアの唇に、どこか自嘲するような笑みが浮かんだ。
「・・・そう心配するな。結構タフだぜ、あいつ。」
 バルフレアは、ラモンと言葉を交わすヴァンの鼻っ柱の強い横顔を見ながら言った。
「2年の間、誤解と偏見の中を一人で生きてきたんだ。・・・大したもんさ。」


「あ、痛てぇ~」
 ヴァンは右の肩を回して顔をしかめた。「トラップの爆風で思いっきりぶつけたもんな。」
「回復魔法はできるだけ節約した方がいいでしょうから、ハイポーションをどうぞ。」「サンキュー。」
 ラモンは相変わらず気前よくハイポーションをくれる。
「ラモンってハイポーション幾つ持ってるんだよ?」
「えーっと・・・まだたくさんありますよ。」
「じゃあさ!」
 ヴァンが何か思いついたように目を輝かせた。
「俺のミストが満タンになるまで回復役はよろしく!」「え?!・・・」
 そう言って、ヴァンは再びわき出す骸骨の群れに飛び込んでいった。
「おら!みんなまとめて骨くずにしてやる!!」
「ハイポーションはいいですけど、ダメージを溜めるとつらいですよ!」
「そんなの我慢するって!」
「でも、戦いながら飲む暇はあるんですか?!」
     っ!!」


「・・・やっぱり、タフっていうより単なるバカだな。」
「・・・・。」
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コメント 2

aosima0714

初めまして!
遊びに来ました!
これからヨロシクお願いしま~す<m(__)m>

by aosima0714 (2009-07-22 15:37) 

エルファ

はい、どうもよろしくです。
by エルファ (2009-08-15 10:03) 

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